高年齢雇用継続給付金をもらうと年金がカットされるの?

知っておきたい制度のこと | 社労士・FP事務所 スマイルポート大津
えみちゃん先生

厚生年金に加入している場合は、高年齢雇用継続給付金を受け取っている割合に応じて年金が一部停止になります。

和子さん
(さとちゃんのママ)

「厚生年金に加入している場合は」ということは、私は、今、厚生年金には入っていないから高年齢雇用継続給付金をもらっても年金はカットされないんですね~。

えみちゃん先生

はい!和子さんのように、雇用保険にだけ加入していて厚生年金に加入していない場合は、高年齢雇用継続給付金を受給しても、年金は一部停止になりません。

和子さん
(さとちゃんのママ)

良かったわ~。ところで、さっき「高年齢雇用継続給付金を受け取っている割合に応じて」って言われてましたけど、割合に応じてとは、どういうことなんですか?

えみちゃん先生

それはですね、実は、高年齢雇用継続給付金は、人によってもらえる割合(支給率)が異なり、それに応じて年金の停止される割合も異なるということなんです。今から詳しくご説明しますね。

和子さん
(さとちゃんのママ)

はい!お願いします。

まず、高年齢雇用継続給付金について確認しておきます。

高年齢雇用継続給付金は、下記の要件に該当する場合に、ハローワークで手続きすることによって受け取ることができる給付金です。

  • 年齢が60歳以上65歳未満
  • 雇用保険に加入していた期間が5年以上ある(前職の加入期間を含めることができる場合あり)
  • 現在も雇用保険に加入している
  • 給与が原則として60歳時点の75%未満に低下している(上限額、下限額の設定ありのため低下していても対象とならない場合あり)

なお、高年齢雇用継続給付金には「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類があります。

「高年齢雇用継続基本給付金」は、基本手当(俗に言う「失業保険」のことです。「再就職手当」を受け取った場合も含みます。)を受給していない方が、受け取れる給付金です。
60歳から65歳までの間で、要件に該当していれば受け取ることができます。

それに対して「高年齢再就職給付金」とは、一旦退職し基本手当をある程度受け取ったが、基本手当の支給残日数が100日以上残った状態で再就職した方を対象とする給付金です。高年齢再就職給付金を受け取ることができる期間は、基本手当の支給残日数によって異なります。

高年齢雇用継続給付金として受け取ることができる給付金は、給与の下がった割合に応じて異なります。

例えば、給与が74%に下がった場合、その月に支払われた給与の0.88%にあたる額を給付金として受け取ることができ、この支給率は、給与の下がった割合が大きいほど高くなります。

支給率が最大となるのは、給与が61%以下に下がった場合で、この場合はその月に支払われたお給料の15%の給付金を受け取ることができます。

そして、高年齢雇用継続給付金を受け取っている方が、厚生年金に加入している場合、老齢厚生年金が一部停止になるのですが、高年齢雇用継続給付金の支給率に応じて年金の一部停止となる割合も変わってくるのです。

先ほどの例であげた給与が74%に下がった場合では、年金は標準報酬月額の0.35%が、停止となります。

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※標準報酬月額については、「社会保険料はどうやって決まるの?」のブログをご覧ください。

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高年齢雇用継続給付金の最大の支給率となる給与が61%以下に下がった場合は、年金は標準報酬月額の6%が停止となります。

このように高年齢雇用継続給付金の支給率が高くなると、年金の停止率も高くなるという仕組みになっています。

停止額の計算ですが、説明だけでは少しイメージしにくいと思うので、具体的に計算してみたいと思います。

例えば、Aさんの60歳時のお給料(60歳に達する直前の半年間の給与の平均額)が、40万円だったとします。

そして60歳以降のお給料が、20万円に下がったとした場合、お給料の低下率は50%です。

低下率は61%以下なので、この時に受け取ることのできる高年齢雇用継続給付金は、お給料の15%ですので、

20万円×15%=3万円

となります。

次に年金がいくら支給停止になるのか計算していきます。

お給料が61%に下がったので、年金は標準報酬月額の6%が停止となります。

お給料が20万円なので、標準報酬月額も20万円だとすると、停止になる年金の月額は、

20万円×6%=1万2千円

となります。

この場合、高年齢雇用継続給付金を3万円受け取って、年金が1万2千円停止になることになります。

ちなみに、厚生年金に加入している場合は、在職老齢年金による停止もあるので、在職老齢年金の停止額も計算してみましょう。

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※65歳までの在職老齢年金については、「働いていると年金はもらえないの?」のブログをご覧ください。

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Aさんの年金が月額10万円で賞与支給はなしとした場合、在職老齢年金の停止額は、

(10万円+20万円−28万円)÷2=1万円

となります。

在職老齢年金による停止額が1万円で、高年齢雇用継続給付金受給による停止額が1万2千円なので、Aさんは2万2千円年金が停止になります。

その結果、もらえる年金額は、

10万円−2万2千円=7万8千円

となります。

和子さん
(さとちゃんのママ)

そっかぁ・・・在職老齢年金の停止もあるんですね。ちなみに、高年齢雇用継続給付金を受け取るには、ハローワークで手続き手続きが必要とのことでしたが、年金の停止も手続きがいるんですか?

えみちゃん先生

実は、老齢年金を請求する時に、雇用保険の被保険者番号を届け出るのですが、そのことにより高年齢雇用継続給付金を受け取ると、自動的に年金が停止される仕組みになっています。

和子さん
(さとちゃんのママ)

そうなんですね~。年金は自動的に停止になるんですね。

【本日のまとめ】
60歳以上65歳未満の間のお給料が、60歳時のお給料の75%未満に下がり一定の条件にあてはまった場合、ハローワークで手続きをすると高年齢雇用継続給付金を受け取ることができる。そして、厚生年金に加入中の方が、高年齢雇用継続給付金を受け取ると、受け取った割合に応じて、老齢厚生年金が一部停止になる。

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